サブスクリプション型ビジネスの普及により、企業と顧客の関係は「売って終わり」から「使い続けてもらう」へと変化しています。その中核を担うのが、顧客の成功体験を支援する「カスタマーサクセス」の存在です。本記事では、現場での実務経験をもとに厳選された、2025年最新版のおすすめ書籍7冊を紹介。理論だけでなく、実践にも活かせる知識を身につけたい方に最適なラインナップです。
カスタマーサクセスとは?初心者にもわかる基礎知識
カスタマーサクセスとは、”顧客の成功を実現すること”を目的に、企業が顧客と能動的に関わりながら価値提供をしていく取り組みです。単なる問題解決を目的とするカスタマーサポートとは異なり、顧客が自社サービスを継続的に活用し、成果を得られるよう支援することが主なミッションです。
特にサブスクリプション型のSaaSビジネスにおいては、継続率(チャーンレート)の改善が企業成長のカギ。そのため、カスタマーサクセスの重要性がますます高まっています。
なぜ今、カスタマーサクセスを学ぶべきなのか
現代のビジネスにおいて、単に”売って終わり”ではなく、”売った後の成果”が問われるようになりました。顧客が感じる”信頼”は、今や企業のブランド価値に直結する指標です。
特にエンジニアやプロダクトマネージャーなど、開発サイドの職種においてもカスタマーサクセスの視点は重要です。顧客の声を製品改善に反映させる、信頼されるチームづくりを行う――そんな取り組みに役立つ考え方として、カスタマーサクセスが求められています。
【2025年版】カスタマーサクセスが学べるおすすめ本リスト(実体験に基づく)
以下は、実務でCREやCSに取り組んだ経験を持つエンジニアが実際に読んで学びになった書籍です。各書とも、理論だけでなく現場に活かせるヒントが詰まっています。
1. 『ユーザー中心組織論』
金子 剛 / 並木 光太郎 著

ユーザー視点を組織全体に浸透させる方法が学べる。プロダクト開発に関わるすべての人へ入門書としてもおすすめ。「誰のために作っているのか?」という視点を組織全体で共有できていますか?『ユーザー中心組織論』は、ユーザーの視点を軸にチームの意識をそろえ、共創による“心を動かすモノづくり”を実現するための実践ガイド。明日から実行できるヒントが満載です。
2. 『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』
トッド・オルソン 著

プロダクトが企業成長の中心となる時代。『プロダクト・レッド・オーガニゼーション』は、顧客体験を起点に組織全体を変革する“プロダクト主導型”の実践書です。Pendo社CEOが、データ活用・オンボーディング・セルフサービスなど、最先端のCX戦略を具体的に解説。プロダクトチームはもちろん、すべての事業担当者に必携の一冊です。
3. 『ユーザーの「心の声」を聴く技術』
奥泉 直子 著

ユーザーインタビューでの落とし穴とその対策。実践的なヒアリング技術が学べる。ユーザーの発言を鵜呑みにしていませんか?『ユーザーの「心の声」を聴く技術』は、調査で見落としがちな50の落とし穴を認知科学の視点で解説。“言葉にされない本音”に迫ることで、真に価値あるインサイトを得る力を養えます。調査初心者から実践者まで必携の一冊です。
4. 『“未”顧客理解 なぜ、「買ってくれる人=顧客」しか見ないのか?』
芹澤 連 著

認知以前のユーザー行動を理解し、顧客体験の最初の接点をデザインする視点が得られます。事業成長のカギは「買わない人」にあり、『“未”顧客理解』は無関心層・ライトユーザーへのアプローチを体系化した日本初の実践書。海外の研究や実績をもとに、市場拡大のヒントをマンガと図解でやさしく解説しています。
5. 『顧客体験フィードバック』
三室 克哉 / 鈴村 賢治 / 中居 隆 著

SNSやコールセンターの声をどう分析し、顧客の真の課題を抽出するか。顧客体験向上のための分析技術を解説。多チャネル化・デジタル化が進む今、顧客の“本音”をどう読み解くかが顧客体験向上のカギ。『顧客体験フィードバック』は、2,000社以上の支援実績をもとに、顧客の声をリアルタイムに分析し、気づきと改善につなげる実践フレームを解説します。
6. 『こうして顧客は去っていく』
宮下 雄治 著

「解約」や「オフボーディング」など、顧客との最後の接点を改善するためのマーケティング視点。「なぜ顧客は離れていくのか?」に向き合います。『こうして顧客は去っていく』は、顧客離脱の10大要因と3つの維持戦略を豊富な事例で解説。チャーン率改善に悩むカスタマーサクセスにとって、今すぐ実践できる処方箋が詰まった一冊です。
7. 『完全版 カスタマーサクセス実行戦略』
山田 ひさのり 著

顧客ライフサイクル全体(認知~導入~活用~更新~解約)を戦略的に設計する手法を解説。顧客との関係構築がビジネス成長のカギであるなか、『完全版 カスタマーサクセス実行戦略』は、SaaSをはじめとするサブスクビジネスにおけるCS戦略の決定版です。旧版から最新動向を大幅アップデートし、組織構築・テクノロジー活用・PLG戦略までを網羅しています。
CRE(Customer Reliability Engineering)という考え方とは?
CRE(Customer Reliability Engineering)は、カスタマーサクセスの一部として注目される新しい概念です。顧客にとっての”サービスの信頼性”をエンジニアリングで支える考え方で、SRE(Site Reliability Engineering)と近い思想を持ちます。
ポイントは「不安は信頼の逆数である」という視点。顧客が安心してサービスを利用できる状態=信頼が高い状態です。この信頼を高めることで、顧客の不安を減らし、継続率を上げるというのがCREのアプローチです。
書籍だけでは足りない?実務でスキルを定着させる学び方
書籍は知識のインプットには最適ですが、実際にカスタマーサクセスのスキルを身につけるには、実務でのアウトプットが欠かせません。
たとえば、
- 小規模なスタートアップでオンボーディングやサポートの仕組みを整備してみる
- ユーザーインタビューやチャット対応を通して顧客心理を理解する
- カスタマーサクセスチームと連携してプロダクト改善に関わる
といった実践が、理解を一段階深めてくれます。
キャリアアップにもつながる!カスタマーサクセスのスキル活用法
カスタマーサクセスで培ったスキルは、他職種でも高く評価されます。
- CSM:継続的な顧客支援を通じて関係構築のプロに
- PdM:ユーザー視点からプロダクト改善をリード
- SRE/CRE:信頼性を重視した設計・運用に貢献
- セールス:既存顧客へのアップセル・クロスセル提案にも活かせる
“顧客に寄り添いながら課題を解決する”という姿勢は、あらゆるビジネスシーンで重宝されます。
まとめ:カスタマーサクセスの本で“顧客に選ばれる人”になる
カスタマーサクセスは一過性のトレンドではなく、今後もビジネスの中心にある重要な概念です。書籍で基礎を学び、実務で応用力を磨くことで、顧客から信頼され、長く愛される人材になることができるでしょう。
まずは一冊、手に取ることから始めてみませんか?