今さら聞けないSREって何? インフラエンジニアや最近よく聞くSLOとの違いとは?

今さら聞けないSREって何

こんにちは、ITキャリアのプロの鈴木たかのりです!
今回は今さら聞けないSREということで、SREについて解説していきます。

近年、IT業界で頻繁に耳にする「SRE(Site Reliability Engineering)」とという用語。これらは信頼性の高いサービスを提供するための重要な概念ですが、インフラエンジニアとの違いや役割を正確に理解している方は少ないかもしれません。本記事では、SREとは何か、そして最近よく聞くようになった「SLO(Service Level Objective)」や関連する用語との違いを解説しながら、SREの具体的な業務や導入の意義について掘り下げます。

SREとは何か?

SREは、Googleが提唱した「信頼性を重視した運用エンジニアリング」の方法論で、ソフトウェアエンジニアリングの原則を運用に適用することで、システムの信頼性とスケーラビリティを実現します 。

具体的には以下のポイントが挙げられます。

  • 信頼性の確保:サービスが予想通りに機能することを保証
  • 自動化の促進:運用タスクを可能な限り自動化し、エンジニアの負担を軽減
  • エラーバジェットの活用:意図的に失敗を許容することで、リスク管理を実現 

このように、SREは単なる運用管理ではなく、エンジニアリングに基づく積極的な問題解決手法を採用しています。

SREの具体的な業務内容とインフラエンジニアとの違い

SRE(Site Reliability Engineer)の業務内容は、単なるインフラ管理にとどまらず、サービスの信頼性を向上させるための技術的な取り組みが中心です。インフラエンジニアが主にシステムの構築や運用管理を担当するのに対し、SREは信頼性を重視したエンジニアリング手法を適用し、運用の効率化や自動化に力を入れます。この違いを念頭に置きつつ、SREの主要な業務内容を以下に示します。

  1. モニタリングとアラート管理
    SREはシステムの健全性を監視し、異常が発生した際に迅速に対応できるようアラートを設計・管理します。インフラエンジニアもシステムの状態を監視しますが、SREはアラートが不要なノイズを生まないようにする設計や、運用データをもとに信頼性向上の施策を検討することに重点を置きます。ログ解析やダッシュボードの作成もこの業務に含まれます。
  2. 障害対応(Incident Response)
    サービス障害が発生した際、原因の特定と迅速な復旧を担当します。SREは一時的な対応に加え、障害の根本原因を特定し、再発防止策を実施します。これはインフラエンジニアが行う障害対応と似ていますが、SREは復旧プロセスを自動化するスクリプトの作成や、根本原因を徹底的に分析してサービス改善に繋げるところが特徴です。
  3. キャパシティプランニング
    システムの利用状況を予測し、トラフィック増加に備えたリソース計画を立案します。インフラエンジニアが物理リソースや仮想リソースの容量を管理するのに対し、SREは将来的な負荷を見越した設計やコスト最適化を重視します。予測モデルを作成し、信頼性と費用のバランスを保つ計画を立てるのもSREの役割です。
  4. 自動化ツールの開発
    SREは手動作業を減らし、運用を効率化するためのツールやスクリプトを開発します。たとえば、デプロイメントの自動化やスケール管理が挙げられます。インフラエンジニアも自動化に取り組むことがありますが、SREはこれを信頼性向上の手段として位置づけ、運用におけるエラー削減を目的とします。
  5. SLO/SLIの設定と管理
    SREはサービスの信頼性目標(SLO)を設定し、その達成度を測定する指標(SLI)を定義・監視します。これにより、ユーザーが期待する品質を維持します。インフラエンジニアが可用性やパフォーマンスの監視を行う場合、SREはこれをユーザー視点での信頼性基準に結びつけて管理します。
  6. ポストモーテム作成
    障害が発生した際、SREは非難を排除した振り返り(ポストモーテム)を行い、再発防止策を文書化します。インフラエンジニアも障害対応の記録を残すことがありますが、SREはこの振り返りを信頼性向上の重要な機会と捉え、共有可能な知識として活用します。
  7. トラフィック管理と負荷分散
    トラフィックを適切に分散し、システムが過負荷にならないように設計・運用します。インフラエンジニアが負荷分散装置や設定の管理を行う一方で、SREはトラフィック管理の結果がユーザー体験に与える影響を深く考慮し、トラフィックの挙動を予測して調整します。
  8. セキュリティ管理
    セキュリティインシデントが信頼性に直接影響を与えるため、SREはセキュリティを考慮したシステム運用を行います。インフラエンジニアもセキュリティを扱いますが、SREはサービスの運用中に起こり得るセキュリティの脆弱性を継続的に監視し、それがユーザー体験を損なわないよう努めます。

SREとインフラエンジニアは業務内容に共通点が多いものの、視点と目標に大きな違いがあります。

  • インフラエンジニアは、システムの安定性や運用効率を主な目標とします。
  • 一方でSREは、「信頼性」を最優先とし、ユーザー体験に基づいた目標(SLO)を達成することに注力します。

これにより、SREはエンジニアリングを通じた継続的な改善と自動化を強く意識し、インフラエンジニアから進化した役割とも言えます。

SLOとSLA、SLIの違い

SREを語る際、避けて通れないのが「SLO」「SLA」「SLI」という用語。それぞれの役割を簡単に整理してみましょう。

  1. SLI(Service Level Indicator)
    サービスの信頼性を測る具体的な指標。たとえば「レスポンス時間」や「エラーレート」が含まれます。
  2. SLO(Service Level Objective)
    目標とする信頼性のレベル。たとえば「99.9%のリクエストが500ms以内に応答する」など、ユーザー体験に基づいた目標を定義します。
  3. SLA(Service Level Agreement)
    サービス提供者と顧客間での合意事項。SLOに基づき、達成されなかった場合のペナルティや補償内容を規定します 。

SREとSLOの関係性

SREにおいてSLOは中心的な役割を果たします。なぜなら、SLOを達成することがSREの目的そのものと言っても過言ではないからです。

たとえば、オンラインストアを運営している場合、ユーザーがストレスなく買い物を楽しめるように、レスポンスの高速化やエラーの最小化が求められます。これをSLOとして明確化し、SLIで定期的に測定することで、信頼性を継続的に監視・向上させるのです。

SREを企業が導入するメリット

企業がSREを採用する主なメリットは以下の通りです。

  1. ダウンタイムのコスト削減
    ダウンタイムの1分間のコストは約5600ドルとも言われています。SREはシステムの可用性を向上させ、ダウンタイムを最小限に抑えます 。
  2. 運用効率の向上
    自動化によって手作業を削減し、エンジニアが高付加価値のタスクに集中できる環境を整備します。
  3. 迅速な開発・デプロイ
    エラーバジェットを活用することで、新機能を迅速にリリースしながら信頼性を担保します。

SREエンジニアになるためのスキル

SREエンジニアを目指すには、以下のようなスキルが求められます。SREエンジニアは求められるレベルが高く、幅も広いので徐々に身につけていきましょう。

  1. 基本的なプログラミングスキルの習得
    SREはソフトウェアエンジニアリングを基盤としているため、PythonやGoなどのプログラミング言語を習得することが重要です。また、スクリプトの作成や自動化に役立つシェルスクリプトも学びましょう。
  2. Linuxやシステム管理の理解
    多くのSRE業務はLinux環境で行われるため、Linuxの基本操作やネットワーク管理、プロセス管理について学ぶ必要があります。
  3. クラウドサービスとコンテナ技術の経験
    AWSやGCPなどのクラウドサービスの利用経験は必須です。また、DockerやKubernetesなどのコンテナ技術も重要なスキルです。
  4. モニタリングツールの習得
    Prometheus、Grafana、New Relicなどのモニタリングツールを使いこなすことで、システムの状態を効果的に監視できます。
  5. SREの基本原則とベストプラクティスの学習
    Googleの「Site Reliability Engineering」書籍などの専門書を読み、SREの基本原則や実践方法を理解しましょう。
  6. 実践的な経験を積む
    現場での経験は非常に重要です。インターンシップや小規模プロジェクトに参加し、SREとしての実務スキルを磨きましょう。
  7. ソフトスキルの向上
    SREは技術だけでなく、他チームとのコミュニケーションや問題解決能力も求められます。チームワークやプレゼンテーション能力を意識的に高めましょう。

まとめ

SREは単なる運用管理の枠を超え、サービスの信頼性を技術的に追求する新しいアプローチです。そして、SLOはその実現に欠かせない基盤となります。SREの具体的な業務を理解し、実践することで、より高品質なサービス提供が可能になります。